今やマーケティングの大家として影響を増しつつある、理央周(めぐる)さんの第4冊目。
「マーケティングをわかりやすく」
本書のテーマは一貫してここに置かれているのですが、正直な読後感は「いやー、本当に判りやすい」でした。 理央さんの真骨頂発揮、とでも言えば良いでしょうか。 サブタイトルにもある通り、「自然に売れる仕組みづくり」をストーリー仕立てで一気に読み進められます。
ダイヤモンド社
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本書でも指摘されているのですが、「マーケティング」という言葉自体がビジネス活動において非常に曖昧な存在となっている理由は、「売る」というアウトプットゴールはありつつも、往々にして「手法中心」になったり、「理論中心」になったり、「現場中心」になったりと、企業やビジネスのあり方に応じてアプローチがそれこそ無数に存在していることから 「理論じゃ現場は動かせん」とか「現場が従ってくれない」的な本末転倒の結果に陥ってしまうわけですが、本書では見事にその手法を「理央流」に整理してくれています。
そもそも、マーケティングというのは事業・ビジネス全体を俯瞰しながら、最終目標に向けて全体のリードを進めてゆく「経営の根幹」でもあるとも言えます。それだけに難しく表現すれば幾らでも名著はあるのですが、理央さんの「マーケティング=売れる仕組みづくり」「何を、誰に、どうやって」というシンプルで覚えやすいキーワードを軸にストーリーが構成されていてとにかく読みやすい。 背景には理央さんの深い知識があるのは言うまでもありません。
舞台設定としては、新商品導入に向けた広告代理店のマネージャー、MBAを取って転職してきた新人、デザイナーを中心としながらも、そのクライアントのみならず家族や友人との対話を織り交ぜながらローンチに向けマーケティングの理論・手法・実際の落とし込み、がストーリーを追うごとに示されてゆくのですがその「筆の運び」が非常に巧み。
えてして商品導入のプロジェクトっていうのは、どの企業でも少なからず新規事業的な要素が含まれていて、既存製品のように「お決まり」のアプローチでは通用しないだけに、現場においては「で、次は何しないといけないんだっけ」とか、「何を想定しておかないといけないんだっけ」的な基本的な視点が抜け落ちてしまうことが多いのではと思います。
本書はそんな時に、ふっと立ち返ることのできる「置いておいて損のない本」と表現できるのではないでしょうか。
Regainなりに理央さんのこれまでの著作を振り返ると;
- 『サボる時間術』=創造的時間の創出を!
- 『最速で結果を出す人の戦略的時間術』=泥臭くも結果を出すためのPDCAを!
- 『ひつまぶしとスマホは同じ原理でできている』=発想をフレッシュに!
という感じになるのですが、今回の小説は、それらを全て凝縮した上でひも解きなおした「珠玉の一冊」だと思います。
※そして巻末付録の用語集も見逃せません。小説の舞台・人物を使いながら用語を読むと、本書の効果が2倍にも3倍にもなるのではないでしょうか。 いやー、ホメすぎか(笑)?