産業革新機構・朝倉陽保氏×コモンズ投信・渋澤健氏×ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント・山田俊一氏「資本主義と金融の本質とは何か」~2009あすか会議レポート | GLOBIS.JP
うーん重い。 朝倉さんの以下コメント。製造業は、金融は、ITは、そして大企業とベンチャー・中小企業と呼ばれる形態が、何を今後すべきなのかを考えさせられます。 Regain自身の回答がないのは勿論ですが(笑)、がつーんと頭を殴られた気分;
日本企業は、管理された金融機関を前提とした企業財務戦略をとっているのが伝統的な形でしょう。これが本当に、日本企業の成長性につながっているのだろうか。戦後から1990年代までの成長期においては、この金融システムと日本の経済成長はいい関係で動いていました。ところがその後の20年、日本の金融システムが日本企業のためになっているのかどうか、少し考えてみる必要があろうかと思います。具体的に言うと、リスクマネーのバラエティが日本には少ない。金融が自由に設計できる米国には、多種多様なリスクマネーがあります。日本には非常に単純なリスクマネーしかないということで、これが企業活動を制限しているのではないかと、個人的には危惧しています。
日本の金融はオーバーシュートさせないことが前提です。新しいアイデアがあってもそれをビジネスにしにくい環境であることは間違いありません。ウォールストリートでは、世界中からエッジのとがった、スマートな人間を集めて、とにかく好きに考えて儲かる仕組みを提案するよう、自由な発想のもとでいろいろなものが生まれてくる。したがって、金融監督当局よりもプロダクトの開発者の自由度が高いので、どんどん新しいものが出てきます。しかし集中管理型の日本の金融市場では、そこまで自由にプロダクトを出せません。
日本の場合はいわゆる独立系ファンド、あるいは外資系ファンドに資金を提供しているのは、中東のソブリン・ウエルス・ファンド(政府系ファンド)もありますが、米国のペンション・ファンドが圧倒的に多いわけです。それも二つあって、一つはパブリック・ペンションと呼ばれる公的機関の年金ファンド。最も有名なのはカリフォルニアのカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)です。もう一つは、企業年金。例えばGMのペンションなどは、実は大きな資金をファンドで運用しています。これらは米国市民のお金ですから、明確なメッセージを持っています。つまり、米国以外の国に関しては、とにかく儲かる案件以外は一切投資する必要はないということです。リスクマネーを米国の国民に頼らなくてはならないということが、今の日本の状況です。これを解決しないと、日本自身の経済成長が阻害されることにもつながります。
日本に戦後できた会社はみんなベンチャー企業だったわけです。だから決して、日本はベンチャー企業ができにくい国だとは思っていません。間違っていけないのは、米国のシリコンバレーを意識すべきではないということです。あそこは米国の中でも特殊で、実験場のような環境です。米国にはシリコンバレー型ではない、普通のベンチャー企業はいっぱいあります。そしてそういうところにファイナンスしている、ローカルのベンチャー・キャピタルもいっぱいあります。むしろこちらのほうが、日本にとってはずっと参考になるでしょう。要するに、世界を席巻する技術を持たないとベンチャーにならないという考え方は、間違っているということです。そういう場所は米国の中でも、シリコンバレーにしかありません。だから、もっと広くベンチャー企業を捉えるべきです。ただし前提条件となる、ベンチャーを支えていくリスクマネーの投資の仕方や、支えていく社会的認知はまだ足りたいことは確かですね。