朝イチにSteve Jobsの訃報を聞いて、感慨に浸ると同時に新しい時代が来るなあという高揚感を持ったのはRegainだけでしょうか。
カリスマ性やプレゼンテーション、そして商品群の評価が高いSteve ですが、彼は同時にファブレスの製造業としての完成されたオペレーション、というか帝国を作り上げたと言っても過言ではないでしょう。 ソフトバンクの孫さんが「芸術とテクノロジーを両立させた正に現代の天才だった」とコメントを寄せられて居ますが、それだけではない。
伝統的な、製造拠点を「モノづくり」の聖地として徹底的に効率を追求しながら付加価値を上げて行く手法の対局として、ラインナップの拡充を急ぐことなく「こう使ってほしい」「こういう商品を作りたい」という商品ビジョンを究極まで突き詰め、劇場的な商品展開をSteve本人が率先し続ける事で作り上げた表向きのパッションの一方で、ODM/EMSサプライヤーと徹底的な(脅迫的な)パートナー関係を結び、開発設計からサプライチェーンまで全てを感じさせないかのようにマネージできるオペレーションを構築したその偉業は、おそらく日本の製造業では登りえなかった山の頂きなのではないかと思います。 加えて、アップル製品そのもの特許も多数ありますが、それ以上に汎用デバイスのモジュールコンビネーションに特許をうまく活用・取得しながら他に類をみない商品開発を行った事も彼がアーティストであり、エンジニアであった事の証として歴史に名を残す偉業だと思います。 そしてiTunesという音楽業界の垣根をひっくり返すプラットフォームを作り上げたことも。
これらは、Steveだからこそ成し得た事であると同時に、その折々の「時代の趨勢」を的確にとらえ、実行してきた結果だろうなあと改めて痛感させられます。 おそらく他の誰かが実現しようと思ってもそうはなりえなかったでしょう。 創業者二人が顕在だった頃のSonyとよく似ているとも言えますが、映像と音楽を提供する製品を自分たちの開発力で作り上げて行った「自由闊達な理想工場」を原点とするSonyと比べれば、徹底的に他社のリソースを活用する事に集中したアップルの、というかSteveの「俺が欲しいものを作れ」的なビジネスモデルに対する姿勢は180度事なると言えるかもしれません。どちらかと言うと、日本で言えば久多良木さんが社長だった時代のPlaystationとソニーコンピュータエンタテインメントが近いのかもしれません。
After Jobsのアップルがどういう商品を提案しようとも、カリスマとの比較が終わることは恐らくないと思われるしプラットフォームとしてのスマートフォンはここからコモディティとしての成熟期に入って行く事を考えると、彼の作り上げたモバイルデバイスの世界をGoogle・Samsung・Sonyがどう奪い合ってゆくのかは非常に興味深い所では有ります。
個人的には、ここから巻き返して欲しいのがSony。既に創業者・カリスマレスで苦渋をなめる期間が長く久しい訳ですが、コモディティ化を突き進むテレビ・電話・PCの世界をどう付き合い、どういう新機軸を打ち出そうとしているのかに非常に期待が高まります。
Appleのオペレーションをまず、深く、理解し、そのレベルまで惹き上がらない限りはSonyはSamsungに本当に買収されたりするかも知れませんが。
ここから頑張れ、日本勢!!
知られざる「鴻海」の実像 : 日経記事電子版
アップルが他社に先駆けて新製品をつぎつぎと投入できる秘密、または他社がなかなか追いつけない秘密 : 藤シローの複眼ウォッチング
アップル、桁違いの部品調達力の秘密 仕様統一で先手: あんてなピピピ
“Apple's… Exclusive Supply Chain Of Advanced Technology [Is] Literally Years Ahead Of Anyone Else On The Planet”
Read more: http://www.businessinsider.com/apple-supply-chain-2011-7#ixzz1a0seQPFp
Apple's secret iPad advantage: The supply chain : ZDnet
Special report: Silicon Sweatshop : Globalpost