大前先生の緊急出版。 印税は受け取らず、売り上げの12%を寄付するとのこと。特設WEBもあります。
本書は「ビジネス・ブレークスルー 大前研一ライブ」で3月13日と3月19日に語った福島原発を中心とした現状分析と予測と、加えて、今後5~10年先の日本の将来について書き下ろした2部構成。 前半の現状分析と予測は、巻末に記載されている無料のYouTube映像を文章に起こした内容なのですが、「大前流」の歯切れの良い筆致と技術的論旨でぐいぐいと読み進めさせてくれます。
文藝春秋
売り上げランキング: 17
Regainが期待していたのは後半部分、「これからの日本はどうあるべきか」に対しての大前さんのProposalなのですが、根本的な解決法としてまず道州制を提案。ここは、これまで大前さんが論じて過去のご出版で提言してこられたスタンスと同じなので「大前読者」にはいささかも食傷気味な部分も。
また、成長停滞している日本の経済の中で電力需要もフラットだ、という観点から建築基準法などを自治体に任せながら原発を効率的に引き上げつつ、国債に頼らずに消費税の累進化で原資確保しながら東北を新しい地域として再構築してゆこう、ということなどを提案なさっていますが、現実問題としてすぐにこうした大胆な改革が実行されることはない訳で、ここに一抹の「残念感」も残ります。 ただ、もはや平均年齢が50歳を超えた国民には大胆な変革を求めるだけのモチベーションも気力もなく、だからこそ逆に国民それぞれが政府に対しての決別と、自分自身の覚悟が必要だ、という論旨には個人としては共感を覚えます。
納得・共感した部分は①「日本の原発の独自の要因を含めた失敗分析を明確に行い、説明する事で世界に対しての日本の政治的な信頼度は大きく確保される」点、②「日本の最後の生産拠点である」東北地方の復興は日本の雇用経済においていかに重要か、という点です。 コアコンピタンスの再構築、資本注入、ブランド戦略、、などなど、今の日本はメーカーの経営破たん寸前の状態で基幹生産拠点が天災と過失で破壊されてしまった状態な訳ですが、新しいパラダイムをどう作り上げるか、という意味ではが一度、大前さんに「震災復興大臣」を挙党態勢で担当してもらってはどうでしょうと思わせる一冊でした。