最近、上司・同僚・スタッフなどなど関わる方々を巻き込んで物事を進めるだけでなく、その方々が自律的に(自立的に)活動をするためにじぶんができることは何か、ということをよく考えるようになりました。
コンサルティングでも商品企画であっても事業開発であっても、提案した内容を受け手が納得・共感してもらうのはもちろんの事、その内容を持続的に、自走しながら活動できてゆくことが何より重要ではないか?と考えるケースが様々に起きたからでしょうねきっと。
そんな中でふと手にした本書。
まず、コーチとしての資質を自身の中に見付けなさい。ただし、その資質が完全に発揮できる時を待つのではなく今すぐ始められる何かを始めましょう。
という言葉には強く共感します。流行のように感じさせる、コーチング本の山の中で、本物と言える1冊です。この本で提示されていることは、著者が実践していることだと思います。様々な参考文献からの引用も、単なる継ぎはぎではなく、著者が完全に消化してものにしている感がします。
コーチングの企業における現状認識も、的確でフェアです。「聴き方」「親子のコミュニケーション」等に造詣が深い菅原さんですが、コーチングをも取り込める、奥行きのあるバックボーンを感じます。
以下はネタバレになってしまいますが、非常に参考になった記載をいくつかご紹介させていただきますと;
コーチングがうまくいく組織は、従って、懐の深い組織であるということができるでしょう。社員が個々のビジョンを語れるようになったとき、それを受け止められる大きな器を持った組織(環境)が必要です。そして、私の経験では、その器とは必ずしもビジョンの大きさではありません。ビジョンに対する経営者や管理者のコミットメントの強さにあるようです。
はっきりとした役割が与えられると、人は自分の存在意義を明確に感じるようになります。つまり、組織の中に自分の”居場所”ができるのです。居場所があるということは、責任がとmないます。責任を求められることこそが、人が組織に所属する根本となるのです。責任を与えられた人は、「組織に自分の存在が認められた」と自覚し、いきいきと活動し始めます。逆に、役割が明確でなければ、居場所がはっきりしないわけですから、集団への参加は楽しいものにはなりえません。
相手をサポートしようとする気持ちが、働きやすい組織や、一緒にいて喜びの感じられる関係を創るのです。理想的な組織や関係を目指し、一人一人がその実現を可能にするコミュニケーション方法を選ぶとき、それこそがまさにコーチングマインドにあふれた人間関係であるといえるのです。人を育てるのは上に立つ者の仕事、と決めつけるのではなく、育てるプロセスで自分も一緒に育とうとする意識がコーチングの基本的な考え方であり、環境づくりの第一歩なのです。
人が求めているのは、「無条件の承認」であり、結果とその結果を産んだ自分に対する「祝福」です。そして、自分の結果が周囲に与えた肯定的影響をしら痛いと思っています。上司が自分の成果を喜んでくれたとき、それが何よりの承認であり、次への動機づけとなるのです。
あなたに頻繁に声をかけてもらっているうちに、相手は、「認めてもらっている」と感じるようになります。人は、自分の存在を認めてくれている人に心を開き、素直にコミュニケーションを持とうとします。そうすると、こちらがうるさく言わなくても、「ちょっと聞いていただけますか?」とこまめに報・連・相をするようになります。なぜならあなたと話すことは楽しく、新しい発見があり、自分が成長することを知っているからです。相手を観察する。そして気づいたことをこまめに伝え、普段から親密な関係を心がける。これがコーチに求められる関係を構築する能力です。
自己コントロールを学ぶための具体的な訓練法
- ストレス(否定的感情)を感じたとき、それが具体的に、どの出来事から発生しているのかを特定する。
- 出来事に対して持っている非論理的観念「~するべき」に気づく。
- その「~するべき」に自分で反論し、「~といえども、~こともある」という文章に置き換えてみる。
- その状況に対して、今自分に何ができるかを考える。
- 行動に移す。
この本には技術はエッセンスのみでまとめられています。
それぞれの技術については目的に応じて掘り下げていきたいなと感じました。
そして、あとがきが響きました。
人は邪魔さえ入らなければもっと育つ事ができる。
いい言葉です。
また、組織にコーチングマインドが浸透していないところでは、いくらコーチングのハウツーを個々の者が習得しても、それを活かすことは難しいという考えを、しっかり全ての組織人が強く認識しておくべきだと感じます。そして組織の真の活性化をめざすなら、上に立つものが率先して、組織の体細胞自体を換えるくらいの覚悟がいるのだと思います。本書は、組織におけるコーチングを 1 on 1から全体に俯瞰するまで広く再認識させてくれる素晴らしい書籍だと言えます。