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【おススメ本】 『イノベーションのDNA』

 

日本での出版自体は2012年1月と、それほど新しくはないのですが、前から気になっていた本をようやく読了。

イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル (Harvard Business School Press)
クレイトン・クリステンセン ジェフリー・ダイアー ハル・グレガーセン
翔泳社
売り上げランキング: 12,395

 

気にはなっていたけれど手に取るモチベーションが高まらかなった理由は大きく2つ;

  1. アカデミックによるリーダーシップなどの研究本は、どうも「学術」くさい。というか、かなり過去事例の分析としては参考になるが、結局のところ心に響いたり、示唆を得たりするものが少ない
  2. イノベータと呼ばれる方々(有名どころで言えばスティーブ・ジョブスやジェフ・ベゾスなど)は結局、いろいろな意味で「特別」なのであり、それをひも解いた場合に、一企業人や個人レベルでどういう応用ができるのか?(上記と似てますが)が結構疑わしい 

。。。でした。

ただ、昨今のソニーやパナソニックをはじめ、いよいよ日本のお家芸的なインダストリーが大量リストラを加速させたり、”Makers”に代表されるような、イノベーションのシーズが大企業中心ではなくなるのでは?的なトレンド感があったりということで、「集団ではなく個人とか小規模レベルでイノベーションを起こすための要素ってなんだろう?」という思いが日に日に強まり、これを気に一気に読み切りました。

結果としては、期待以上の内容でした。 個人スキルとしてのイノベーション実現力、というか、「変えるべき対象をどう見つけ、変えてゆくか」という方法論を、いわゆる成功者へのインタビューを基に整理されていて、それがよく纏まっているし、なにより心に響きます。

本著の冒頭に、それがよくまとまっていましたのでご紹介。

イノベータが人と違う考え方ができるのは、「人と違う行動」をとっているからこそだ。すべてのイノベータが、常に疑問を持ち、現状に風穴をあけるような質問を頻繁に投げかけていた。世界をこの上なく熱心に観察している人もいた。多彩な人たちとのネットワークを築いた人もいた。実験を軸にして、イノベーション活動を進めている人もいた。これらの行動、つまり質問、観察、ネットワーキング、実験は、継続的に携わることで、新しい事業、製品サービス、プロセスの源泉である、関連づけ思考を刺激する。一般に、新しいアイデアを生み出す能力は、純粋に認知的スキル、つまり頭の中だけで完結するスキルだと思われている。しかしわれわれの研究は、革新的なアイデアを生み出す能力が、知性だけでなく、行動によっても決まるという、重要な洞察を示している。これは誰にとっても喜ばしい知らせだ。誰でも行動を変えることで、創造的な影響力をますます発揮できるのだから。

つまり「何に対して、どう行動する?」という個人ベースでの基本的な姿勢を本著では具体的に、事例を中心に語られています。これをスキルというべきか、姿勢というべきか。 その両方なのでしょうけど。 

調査の結果としてまとめらた5つの特性(質問、観察、ネットワーキング、実験、関連づけ思考)がイノベーターの行動の源泉として整理されており、各々の詳細な実践方法と、それらそれぞれの能力を伸ばすヒントがこれまた世界的に有名な「リーダー」のインタビュー事例をもとに描写されてゆきます。 この5つの特性自体は、個々に見れば特段目を見張るようなことでもないのですが、「リーダー」によりどういう差異があって、それを彼らがどう活用しながら自分自身をリーダー足らしめているのか、という点の記載が非常に興味深い。

他方、個人ベースだけでなく、小規模チームについての記載も非常に興味深い内容でした。

世界で最もイノベーティブな企業には、イノベーションを深いところで理解するリーダーがいる。リーダーは優れた発見力でイノベーションの陣頭指揮をとり、絶えず画期的なアイデアを提供する。実行志向型のトップがいる企業の幹部がこぼしていた。「実行にとらわれていたら、社員はイノベーティブになれない。そんなことでうまくいくはずがない」 (中略) 発見志向型と実行志向型の人材が互いに影響し合い、学び合い、支え合うことで、イノベーションの強力な相乗効果を生み出す土台ができる。

つまり「リーダーの存在」があっても、彼らが管理者や実行型マネジメントを強いられる限り、本来のリーダーシップやイノベーションは生まれにくい、という点はまさに今の日本を象徴しているように思わせられます。 逆に言えば、これからは小規模チームのプロジェクトに相当程度の自由度・裁量を持たせ、自社のいわゆるマネジメントプロセスからいったん切り離した形でビジネススタートアップを図る大胆さをもっと加速させる必要が本当に求められる時期にあるとも言えるのかもしれません。 

ただしそうした「ハコ」を準備したとて、個人ベースの創発意欲がなければ無駄に終わるのも事実。 どっちが先、と言えば日本においてはまず組織だろう、とRegainは思います。 個人で何かをする、とか、会社にアングラで何かをする、ような意欲を持ち続けることは、誤解を顧みず言えば少なくとも大企業に属する個人にはほとんど残っていないような気がします。

その一方で、「一人ひとりによるそんなにイノベーションって大切なのか?」「別になくたっていいじゃん」という声が聞こえてきそうですが、Regain的には、イノベーションというのは身近なものなのだと思うのです。身の回りにあって自分や集団にストレスを与えているもの、それを解決することで得られる喜びみたいな感覚、これこそがイノベーションを起こす動機なのだとしましょう。 そうした場合に、モノやサービスがあふれ、「ストレスなんかねーじゃん」と思われる場合は、「退屈じゃなくすること。暇つぶしじゃなく」に向けた、自分ならではの「改善」をトライしてみることで、今までの環境が、目に見えないストレスを増幅させてたんだと気づかされることになるんじゃと思います。 それは、家の模様替えでも、退会が延び延びになっているツタヤのオンラインをキャンセルするでも、はたまたDIYでも、家族との対話でも、そういうところからイノベーションの源泉が生まれてくるんだろうなあと。

「なんか面白くない」「クサクサする」そういう感覚を強く抱く方、たとえその方の業種が何であれ、にとっては大変有用ではないか、と強く感じる一冊でした。そう、Regainにとっても。